発達障害・グレーゾーンのお子さんの場合、学習障害(LD)や知的な遅れがない場合でも、学力が低くなってしまうことがあります。
発達障害があるから必ず知的な遅れを伴うわけではありません。知的な遅れがないのにも関わらず、本来の力を発揮できないのはお子さんにとってもったいない状況です。
- 発達障害の特性がどのように学力不振を引き起こすのか
- 学力不振を防ぐために家庭で取り組めること
これらについて解説していきます。
お子さんが本来持っている力を発揮して、学力を向上させていくために、できることから生活に取り入れていってください。
発達障害の特性による学力獲得への影響
発達障害・グレーゾーンの子ども達は、脳の働きに特性があるため、学習障害(LD)や知的な遅れがない場合でも、学力が低くなってしまうことがあります。
ひと言で表現すると、勉強方法が身につきにくいということです。
発達障害とは
発達障害には、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)などがあります。
知的な遅れがない場合もあり、これらの障害を併せ持つこともあります。
グレーゾーンとは、
- 発達障害の診断基準を満たしていない
- まだはっきりと判断がついていない
- 未受診の状態
これらの状態を表した言葉で医学用語ではありません。
発達障害とグレーゾーンについては別の記事で詳しく解説していますので、よろしければそちらの記事を参考にしてください。
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発達障害グレーゾーンかも?発達が気になる子どもの特徴とは
発達障がいグレーゾーンとは|発達障がいであるがゆえの辛さを知って、適切サポートで二次障害予防につなげよう
ADHDの学力への影響
ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、集中力の維持が困難で、衝動的な行動を取りやすい特性を持つため、学習に影響を及ぼすことがあります。
注意力の持続がむずかしく学力が低下する
授業中に集中できず、教師の説明を聞き逃すことが多くなります。注意力が途切れることで重要なポイントを理解できなかったり、宿題や自宅学習も注意が散漫になり継続できなかったり、そもそも取りかかることができなかったりします。
ワーキングメモリが足りないために複合した作業をするのが苦手で、黒板の文字を書き写したり、楽譜を目で追いながら楽器を演奏するといった勉強への取り組みそのものが難しい場合があります。
ASDの学力への影響
自閉スペクトラム症(ASD)は、社会的コミュニケーションや柔軟な思考に困難さが学習に影響を及ぼすことがあります。
勉強方法への適応が難しく学力が低下する
人の気持ちや比喩表現を読み取れないといった特性から、対人関係やグループ学習の場面への適応が難しいく、指示の理解や変化への対応が難しい場合があります。
教師からは「生意気な子ども」と受け取られてしまう場合もあり、人間関係の低下が学習意欲をそぐ原因になることもあります。
また、特定の興味やこだわりが強いため、興味のない教科や内容に対する学習意欲が低下することがあります。
LDの学力への影響
学習障害(LD)は、特定の学習領域での困難さが特徴です。
読み書き、計算など特定のスキルに困難を抱えるため、学習内容の理解や課題の達成が難しくなります。
苦手な概念や処理が学習の理解を困難にする
例えば、読解力や書字能力の障害は、教科学習全般に影響を及ぼし、数学的な概念の理解や計算能力の問題を放置すると、成績の低下を招くだけでなく、学力不振や学習に対する自信の喪失につながることがあります。
R4年1~2月に実施された「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」によると、「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒は小中学校で8.8%存在することが推定されています。
出典:「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する 調査結果について 」厚生労働省
このことから、知的な障害がないのに、学び方を獲得するために特別な支援が必要な子ども達が一定数存在することがわかります。
学力低下を防ぐためにできること6つ
発達障害グレーゾーンの子どもが本来の能力を発揮できずに、学力が低下してしまうことは避けなければいけません。
ここからは、お子さんの学力低下を防ぐためにできることを6つご紹介します。
医療機関を受診する
医療機関を受診することは、お子さんの客観的な状況を知ることにつながります。
知能検査や発達検査、ペアレントトレーニングの受講に進む場合もありますので、なるべく早い段階で医療機関と繋がっておきましょう。
ADHDは症状を和らげる薬があります。ASDには直接的な治療薬がありませんが、困っている症状に対して薬が処方される場合があります。
勉強に集中できない原因になっている特性を弱めることができれば、本来の学習能力を獲得できる可能性が上がります。
投薬を勧めたり、薬を飲めば学力を上げられるということではありません。主治医の先生とよく相談して、お子さんの状況に合わせた方針を決定してください。
ADHDの投薬の体験談を別の記事にまとめています。興味のある方はこちらも読んでみてください。
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インチュニブの効果と実感&クリニックとのつき合い方【小学生&中学生の体験談】
ADHDグレーゾーンの息子が、小学生と中学生の時に二度、インチュニブの投薬治療を受けた体験談をまとめました。
環境の調整
勉強するための環境をお子さんの特性に合わせて整えましょう。
- 勉強するスペースをパーテーションで区切って集中できる環境作り
- テレビを見るとき以外は布をかけておくことでテレビやゲームに関心が向かない工夫
- 勉強する姿勢の維持がしんどそうであれば、足が踏ん張れるようにイスの高さに調整したり、体格にあったイスを用意する。
お子さんの苦手に合わせて、たくさんできることがあります。勉強に集中できない原因は何かをしっかり観察して、可能性が高いものから環境調整を試していきましょう。
事例紹介(小学校低学年のAくん)
算数の宿題をなかなか終わらせられないAくん。
毎日お母さんがつきっきりで見ていたが、それでも時間がかかっていた。
Aくんの「たくさんありすぎて嫌になる」という言葉をヒントに、問題が1つしか見えないように紙や下敷きを被せて隠した。
1つの問題に集中できるようになって続けて取り組めるようになった。結果、スピードが上がり宿題をすぐに終わらせられるようになった。
物理的に他の問題を見えなくすることでうまく行ったケースです。
この事例のようにお子さんの課題をよく観察するだけでなく、お子さんにも聞いてみて手掛かりを集めるのも有効です。
他にも便利なグッズをこちらの記事で参考にしていますので、参考にしてください。
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子どもとの接し方を見直す
発達障害・グレーゾーンの子どもは会話のニュアンスを読み取ったり、口頭での指示を聞き取って意味を理解するのが苦手です。
ポイントを押さえた接し方をすれば、子どもも理解しやすくなり、お母さんもぐっと楽になるでしょう。
ポイントは、具体的でわかりやすく指示をすることと、たくさんほめるということです。
スポーツでも「今の良かったよ」と声をかけあったりしませんか?
それが簡単なことだったとしても、自分以外の人から褒められることは大きな自信につながります。
子どもがうまくやれたことに対して、たくさんフィードバックしてあげましょう。そうすることで、これでいいんだと安心もするし自信もつき、自己肯定感が高まるのです。
興味や強みを伸ばす
子どもの興味や強みに焦点を当てた学習活動を家庭で取り入れるのも良いでしょう。
「自分はこれが得意なんだ!」と思えるものを持つことは、自己肯定感を高めるためにもとても良いことです。
教室での集団指導では集中できない場合
教室での集団指導では集中できない子どもも、自分のペースで学習できるタブレット学習であれば、勉強そのものに集中できるかもしれません。勉強スペースの環境を整えることと併せて試してみてはいかがでしょうか。
こちらの記事では、発達障害・グレーゾーンの子ども達にオススメのタブレット教材を解説しています。参考にしてください。
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【2024年版】発達障害・グレーゾーンにオススメのタブレット教材3選
発達障害・グレーゾーンの子どもにオススメのタブレット学習を徹底解説!
プログラミング必修化
プログラミングは学習指導要領の改訂で必修化されました。
発達障害の子どもにはプログラミング的思考が得意な子どもが多い印象があります。プログラミングの要素があるゲームの「マインクラフト」が好きなお子さんも多いのではないでしょうか。
教室での授業は集中できないお子さんでも、小学生に大人気のゲーム「マインクラフト」を使ったプログラミング講座であれば興味を持って取り組めるかもしれません。
反復と練習
発達障害・グレーゾーンの子ども達は一言で言うと、がんこで不器用。
脳が学ぶ方法を身につけることに苦労しています。定型発達児たちより時間はかかるかもしれませんが、コツコツ続けて習慣化していけば、大人になるまでに本来の能力が身につくはずです。
諦めて投げ出さずにコツコツ続けたことが身についていけば、それを実感できたときにお子さん本人の大きな自信になるでしょう。
児童精神科医のてんねんDr.先生のポストを紹介します。
典型的ADHD児は中学くらいまでは頑張ってもテストの点数が取れないことが多いんです。能力が出しきれないんです。原因のひとつにやはりワーキングメモリの問題があるようで、「記憶はしたはずなのに、必要な時に必要な情報を必要な形で出せない」というふうになってしまうようです。これはお薬も限界を感じます。
しかし、高校に入る頃になると、やっと定型の子に追いついていけるようになるんです。これは2007年の学習に関連した脳の部位の厚みに関する研究からも分かってきています。中学時代に頑張った子は、高校のランクが本来より下になったとしてもそこで花を咲かせることも多いのです。今の努力は無駄になりません。
学習性無力症「どうせなにやったって無駄なんだ」になってしまうことは避けたいです。頑張ったこと、頑張れたことを褒めてあげてほしいですね。成績が追いつくのはもう少し後です。
※アンダーラインと太字は筆者による加筆
てんねんDr.@adhdsavetheplan-https://twitter.com/adhdsavetheplan/status/1725659659774861623
このポストにもあるように、発達障害の特性のために自信を喪失してしまうことは避けなければいけません。
発達障害の子どもは学習方法の獲得に困難がありますが、努力を続ければ徐々に成長していきます。他の子ども達と比べたりせず、自分のために学習を続けて行けるようにサポートしていきましょう。
社会的スキルの獲得
発達障害・グレーゾーンの子どもはその特性から、周囲への言葉や態度がきつくなってしまい、教室内で孤立することも。
対人関係の中で、自分の気持ちを落ち着かせたり、自分の考えや気持ちを周りの人を傷つけずに伝えたり、先生や大人との正しいやり取りを身につけることは、子ども自身のためになります。
そこで、家庭内でソーシャルスキルトレーニングに取り組むのも良いでしょう。
ここではソーシャルスキルを題材にしたかるたを紹介しましたが、どんなかるたでも使っても大丈夫です。
ゲーム形式で遊ぶことは、応答的コミニュケーションの連続ですのでソーシャルスキルトレーニングにもなります。
この他にも、
- 日頃から家庭内であいさつやお礼をきちんとすることを心掛ける
- お出かけ時には親がお手本になることを心掛ける
- 気持ちが切り替えられない時に「まあ、いっか」と気持ちの切り替えのコツを声掛けする
家庭内でソーシャルスキルトレーニングしていけることはたくさんあります。
こちらの本は、教室内で役立つソーシャルスキルが具体的に解説されています。図解で分かりやすく、ワークも紹介されているので活用もしやすいです。
お母さんのソーシャルスキルの教科書として、こういった本を一冊お手元に置いておくことをおすすめします。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事では、発達障害・グレーゾーンの子どもたちの学力に影響を与える要因とサポート方法について解説しました。
発達障害グレーゾーンの子ども達は、周りの子ども達よりも脳の育ち方に特性があり、本来の力を発揮できるまで成長するのに時間がかかります。
学習の獲得そのものに難しい子ども達が、本来の力を発揮できるようになるまでに学んだことは、決して無駄になりません。
勉強や学校生活への意欲を失くしてしまわないように、自己肯定感を損なわないようにサポートしていきましょう。