通っている幼稚園から「いじめの可能性があるから入れない方がいい」と言われました。
夫が「うちの子どもは普通だ!」と支援級入級に反対していて......。
支援学級入級を検討しているお母さんから、こういった相談を受けたことがあります。この記事では、周囲の反対意見に悩まされたり、同じようにいじめや偏見に不安を感じているお母さんのために、下記のような内容を解説しています。
私の子どもはADHDのグレーゾーンです。診断名はついていませんが、通院は続けて投薬を受けている時期もあります。発達障がいグレーゾーンの子どもが定型発達の子どもの集団の中で生きる大変さを、親として側で見てきました。
また、保育士として療育の現場に勤務する発達障がい児支援のプロでもあり、日々発達障がいの子どもたちとともに過ごし、子ども達の健やかな成長と保護者の支援を仕事としています。
私が息子が支援学級を勧められた時にも、支援学級がどんなものかもピンと来ていなくて、「ある教科だけ別教室に行って授業を受けると目立つのでは?馬鹿にされたりいじめられたりしない?」と不安になりました。
この記事を最後まで読んでいただければ、いじめに巻き込まれないために支援学級を利用する考え方がわかり、いじめの不安が少なくなるでしょう。
では、本編に入ります。
発達障害グレーゾーンの子どもがいじめに巻き込まれないために
担任の力量次第
発達障害グレーゾーンの子どもはその特性から、良くも悪くも目立つことが多いです。
口頭の指示が入りにくい子どもの場合、授業中に机の中にタブレットをしまう場面で周りの友達が終わったころに気づいて片付けはじめたり、机の中からお道具箱を出して中からものさしを出してお道具箱を机の中に戻す場面で、ものさしを出せたけどお道具箱をしまわずに中身をいじり出す......といったことが多発します。
気持ちの切り替えが苦手な子どもの場合、ちょっとしたゲーム仕立ての授業で負けて、激しく怒り出して気持ちがなかなか治まらなくて授業が中断するといったことが起きます。
こういった少し幼いふるまいをする子どもを受け入れられるかどうかが、いじめに発展するかどうかにかかっています。
支援学級かどうかよりも、クラスの中で目立つ存在の発達障害グレーゾーンの子どもをどう受け止めるかがいじめられるかどうかのポイントです。
受け入れられない雰囲気のクラスであるとしたら、それは担任の学級運営に問題があるのです。
良い担任 | 悪い担任 |
---|---|
良いところを伸ばし、悪いところは助け合うクラス運営 | 親への悪い報告が多い |
支援担任との連携がバッチリ | 担任自身が息子を受け入れていない |
筆者の経験から、良い担任と悪い担任には共通する特徴があります。悪い担任は教師としての技量、人間としての度量に欠けています。トラブルがあるとその対処にばかり目が行っているようで、叱られてばかりの息子は自己肯定感が下がる一方でした。クラスでの居心地も悪いようで、その担任の一年間は学校に行くのが嫌そうでした。悪い担任にあたった時のことを考えると、支援担任と連携できる支援学級に入っていた方が安心です。
加害者になる可能性もある
いじめられる心配だけでなく、いじめる側になる可能性も忘れてはいけません。
例えば、お子さんは第三者で、クラスの誰かがからかわれているところに遭遇した場合、コミュニケーション能力の幼さからからかう側に加担する可能性はありませんか?
他にも、ちょっとしたいざこざから、カッとして手が出たりきつい言葉が出る可能性はないでしょうか?
小学校に上がって中学年以降になると子どもたちの世界ができてきますし、幼稚園や保育園時代と違い、トラブルがあった時に子どもが自分で家庭で説明できるようになっていきます。
子ども同士のトラブルは保育園や幼稚園から何度も何度も経験し、少しずつトラブルになったときの対処方法や、トラブルにならないような気持の伝え方を身につけているはずですが、小学校になってなくなるわけではありません。
中学年くらいになると手を出す子どもは減ってきますが、発達障害グレーゾーンの子どもの場合は、気持ちを伝えることが苦手で言葉のやり取りで追いつめられると手が出てしまうということもあります。
集団の中で発言したり、自分から行動を起こすことが苦手な子どももいます。本人に悪意がなくても、性格が合わない子どもと家族からは「いじめっ子」と思われる可能性もあります。
事例紹介
小学校1年生女児二人。仲が良くてよく一緒に遊んでいるけれど、よくケンカになる。
Aちゃん:ADHDグレーゾーン。集中できる時間が短い。発達検査は受けているが診断は降りていない。語彙が多く頭の回転が速いが正しく使いこなせない。感情が高ぶると友だちへの言葉がきつくなる。遊具の取り合いのような場面で、次々と暴言が出てお友だちが泣いてしまう。教師からの問いかけにも素直に応じない。後期から支援学級入級を検討している。
Bちゃん:定型発達。誰とでも楽しく遊べる。家では親に言われたAちゃんの言葉を伝えている。
Bちゃんが、家で両親にAちゃんから言われたことを伝えることで両親が不安になって学校に何度も問い合わせを入れる。回数を重ねるごとに両親の不信感は大きくなり、「いじめられている」と猛抗議。
BちゃんはAちゃんと気が合って遊ぶけれど暴言は嫌だから、家ではお母さんに甘えて愚痴を言うのでしょう。
学校側はいじめではないという認識で、Aちゃんの両親が謝罪し、学校側もBちゃんとの仲の良さとAちゃんが抱えている課題を丁寧に説明することで、理解が得られたということです。
このケースのように、実際にはいじめではなくても、子ども同士のトラブルが保護者に伝わることで、いじめではないかと話が発展する場合もあります。
いじめに巻き込まれないための支援学級活用
学校と課題を共有する
支援学級に入っているということは、学校と相談して個別支援計画を作り、学期ごとの成長目標が設定されます。これは、学習や情緒に支援が必要で、保護者が学校に対応を求めているという証明でもあります。
- 気持ちの切り替えが苦手
- 相手の気持ちを考えるのが苦手
- すぐに手が出てしまう
- 1時間座り続けられない
- 他責傾向が強く、友だちとのトラブルが絶えない
こうったトラブルが多い場合、支援学級に入っていれば、支援担任の耳にも必ず入ります。友だちとのトラブルはソーシャルスキルトレーニングの実践演習の場ですから、支援担任や学級担任と振り返りを行うことができます。
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クラス担任に負担をかけない配慮
いじめに発展するかは学級担任の力量次第、と前段でお話ししましたが、クラス担任に負担をかけない配慮も大切だと考えます。
クラス担任はクラス運営に専念し、支援担任が情緒面の課題を専門にケアしつつクラス担任と連携するといった体制の方がそれぞれの能力を発揮しやすくなるでしょう。
支えは多い方が良いのは間違いありません。
支援担任がつくことで担任一人の技量に頼らずに済む体制を作りましょう。
支援学級にはいるときの心得
隠そうとしない
「支援学級に在籍していることを周囲に知られたくない」という理由で、連絡帳のやり取りに配慮をお願いしたり、通級指導教室を希望するお母さんがいます。
本人の希望であれば別ですが、「夫が嫌がっているから」、「ママ友さんに知られたくない」といった理由で隠そうとするのはやめましょう。子どもに「支援級=恥ずかしいこと、隠すべきこと」という間違った認識を植え付け、自己肯定感を下げかねません。「おけいこでは支援学級だとみんなに言っちゃダメ」等の口止めをするのも子どもを傷つけます。
ためらいがあるのは、お母さんがまだ心の準備ができていないのです。お母さん自身が子どもの状態をありのままに受け入れられてから、支援学級入級を検討してみてもいいのではないのでしょうか。
私の子ども達が通う大阪府のある小学校では、通常学級とも支援学級とも違う「算数が苦手な子どものための算数の教室」があります。学年が進むにつれて段々難しくなる算数の授業。算数が苦手な子どもがその教室で授業を受けることで、授業についていけない子どもの学習意欲を引き出すよい仕組みだと思います。ついていけている子ども達の学習進度も保たれます。
先生との協力体制を作る
学習指導要領に沿って行われる通常学級と違って、支援学級の通知表は個別支援計画を元に評価されます。
年間目標 | 短期目標 |
---|---|
気持ちのコントロールができる | 自分の気持ちの波に気づく |
活動中、集中して取り組む | 不必要な発言をしないで取り組む |
個別支援計画を見ればわかる通り、子どもが克服すべき情緒面の課題とそのためにまず取り組むべき目標が設定されています。
保護者のニーズも考慮して作成されますので、「今日こんなことができました!」「最近調子が悪い」といった普段の様子を先生と共有できていれば、より実態にあった計画が立案でき舞うので、日頃のコミュニケーションを大事にしましょう。
個別支援計画とは
子どもの成長をどのように支援していくかが明文化されたもの。保護者のニーズも考慮しながら、発達支援管理責任者が作成する。
子どものサポートは万全に
「支援学級のくせに」とからかいを受けることがあるかもしれません。
子どもが支援学級をやめたいと言ってきたら、じっくり話を聞いて何かきっかけかを聞いてみましょう。学校にも相談してみてください。一旦、連絡帳のやり取りだけにする等の対応をしてくれる場合もあります。特に、支援学級は退級すると再入級は認められない自治体もあるので、しっかり考えて後悔のないようにしてください。
事例紹介(私の息子の場合)
中学校に上がって同級生から「支援学級のくせに」と言われたことがあります。センシティブな発言だったことから、周囲のクラスメートたちを巻き込んでの大騒ぎになりました。詳しく聞くと、普段からその同級生とはよくケンカになっているらしく、息子も負けずに言い返しているのでお互い様という感じでした。
ですが、それ以来、支援学級に行きたくないと強く言うようになり、紆余曲折の末に退級しました。高校は受験をして普通科高校を希望していたので、あと1~2年のことなのだからと本人の意思を尊重する形になりました。
侮辱する言葉だったことは間違いないですが、いじめだとは思っていません。
支援学級のやめるタイミングはその後の進路も含めて考えると良いでしょう。こちらの記事で発達障害グレーゾーンの中学卒業後の進路選びについて解説しています。
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支援学級卒業後の進路への影響と選択肢について解説
支援学級だと内申点がつかない?発達障害グレーゾーンで支援学級を利用したいが内申書に悪影響がないか心配。そんなお母さんのために、中学卒業後の進路の基礎知識や進路選択のコツを解説。
支援学級を利用するにしろしないにしろ、いじめは絶対に許されない行為です。もし、いじめに巻き込まれている様子があったら、早めの大人が介入することが大切です。しっかり話を聞き学校とも共有してましょう。
いじめまではいかなくても、友だち同士のトラブルは避けて通れません。
トラブルはなるべくなら避けたいですが、もしトラブルに巻き込まれたら、親子でしっかり話し合いましょう。そこから社会性を学んで身につけられれば、貴重な経験として活かすことができます。
まとめ「いじめに巻き込まれないために支援学級を活用しよう」
支援学級に入る入らないにかかわらず、日頃からお子さんの様子には気を配り、発達障害グレーゾーンの子どもの課題を担任の先生と共有しましょう。いじめをする側にもされる側にもならないためにも大切なことです。
私も子どもの支援級入級を検討した時に、偏見やいじめへの心配が頭をよぎりました。親であれば誰もが通る道とも言えます。
「お子さんにとって最善の選択は何か?」
支援学級の責任者である支援コーディネーターの先生に相談することもできます。お子さんの成長にとってベストな方を選びましょう。
支援学級を利用しない場合は、支援学級よりも担任の先生とお母さんの関係作りはより重要になってきます。日ごろの学校での様子と家庭での様子を交換し合えるような関係を目指しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。個人的には、支援学級の仕組みを利用できるのであれば積極的に利用して、自己肯定感たっぷりに成長してほしいと思っています。